「うちの子、暗記が苦手なんです」

理科や社会の勉強を見ていると、そう言いたくなることがあります。

昨日覚えたはずなのに、もう忘れている。

何度読んでも、頭に入らない。

 

子ども自身も、「私、暗記が苦手やから」と言っている。

でも、私は一度こう聞いてみたいんです。

 

自分の住所は覚えていますよね。

自分の名前も、生年月日も覚えている。

 

好きなゲームのキャラクターなら、親が知らない名前まで言える。

好きな歌なら、教科書より長い歌詞を覚えていることもあります。

ということは、少なくとも、

記憶するという基本の働きは、ちゃんとある。

私は「暗記が苦手」という言葉を、そのまま受け取らなくてもいいと思っています。

自分の住所は、どうやって覚えたのでしょう

住所を覚えるために、

「今日中に20回書きなさい」

と言われた子は、あまりいないと思います。

 

小さい頃から何度も聞いた。

学校の書類に書いた。

荷物を送る時に使った。

必要な場面で、何度も思い出した。

そうしているうちに、いつの間にか覚えています。

住所を一度で暗記したのではありません。

何度も思い出しているうちに、記憶に残った。

これが一つ目の残り方です。

大事なのは、何度見たかではありません。

 

何度、頭の中から出してきたかです。

教科書を3回読んだ。

ノートを3回眺めた。

目は3回通っています。

 

でも、答えを隠して思い出していなければ、記憶を取り出す練習はまだしていません。

私は、暗記の回数を数えるなら、

見た回数ではなく、思い出した回数

を数えた方がいいと思います。

一度しか経験していないのに、覚えていることもある

一方で、何度も繰り返していないのに、忘れないこともあります。

 

旅行先で迷子になった。

運動会で派手に転んだ。

初めてジェットコースターに乗って、思わず叫んだ。

USJでゾンビに追いかけられた。

 

こういう出来事は、一度しか経験していなくても覚えていることがあります。

その時の場所。

周りにいた人。

自分が感じた驚きや怖さ。

そうしたものと一緒に、出来事が記憶に残るからです。

これが、もう一つの残り方です。

 

専門的には「エピソード記憶」と呼ばれますが、難しく考えなくて大丈夫です。

出来事と一緒に覚えたものは、思い出す手がかりが多い。

ということです。

受験の暗記は、どちらの道も通っていないことがある

では、理科や社会の暗記はどうでしょう。

初めて見る言葉が、一度にたくさん出てくる。

自分の生活とは、あまり関係がない。

教科書を一度読んで、線を引く。

そして次のページへ進む。

強く印象に残る出来事もない。

あとから何度も思い出す機会もない。

 

これでは、忘れても不思議ではありません。

暗記力がないというより、

記憶に残る二つの道を、どちらも通っていない。

そう考えることもできます。

受験暗記の基本は「思い出す回数」です

すべての知識を、強烈な出来事にすることはできません。

鎌倉幕府を覚えるたびに鎌倉へ行くわけにもいきません。

植物を覚えるたびに山へ行っていたら、受験勉強がなかなか進まない。

 

ですから、受験暗記の基本は、

覚える。

すぐに思い出す。

少し時間を空けて、また思い出す。

さらに時間を空けて、もう一度思い出す。

この繰り返しです。

 

そのうえで、覚えにくいものには、

歌。

映像。

地図。

語呂合わせ。

面白い話。

実際に見たもの。

こうした手がかりをつける。

私は、この二つを組み合わせるのが現実的だと思います。

「愛のメモリー」は、二つの道を組み合わせています

私が作った理科暗記教材「愛のメモリー」も、この考え方で作っています。

まず、理科の暗記事項を歌と映像にしています。

普通に教科書を読むより、

「あのメロディーのところや」

「あの映像に出てきた言葉や」

と思い出すための手がかりができます。

 

ただし、私は、

歌を聴いたら、それだけで覚えられる。

とは考えていません。

印象に残ることと、入試で答えられることは別です。

 

そこで、歌って覚えたあとに確認問題を行います。

覚えたら、すぐ確認する。

そして、忘れた頃にもう一度確認する。

さらに時間を空けて、また確認する。

 

「愛のメモリー」では、最初の確認問題に加えて、その後3回、時間を空けて確認問題がメールで届きます。

歌と映像で、思い出す手がかりを作る。

確認問題で、思い出す回数を作る。

この二つを組み合わせています。

理科暗記ソング「愛のメモリー」を見る

暗記力を疑う前に、二つだけ確かめてみる

子どもが、

「覚えられない」

と言ったら、私は二つのことを確かめます。

 

一つ目は、

何回、思い出してみたか。

二つ目は、

思い出すための手がかりがあるか。

 

一度読んだだけ。

一度書いただけ。

一度言えただけ。

それで忘れたからといって、暗記が苦手とは限りません。

自分の住所を覚えているなら、暗記の基本はできています。

 

足りないのは、根性でも才能でもない。

思い出す回数かもしれない。

思い出すための手がかりかもしれない。

「この子は暗記が苦手だ」

と決める前に、

この知識は、記憶に残る道をちゃんと通ったかな。

一度、そこを見てみてください。

子どもの記憶力を責めるより、覚え方を変える。

私は、その方が話が早いと思います。


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この記事を書いた人|ミスター・ツカム

中学受験指導歴20年以上。個別指導塾で、延べ3,000人以上の子どものノートを見てきました。子どもの「やる気」や根性だけに頼らない学習の仕組みを考えています。

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