私が個別指導塾で講師をしていた頃の話です。
文章題の前で、手が止まっている子がいました。
私は、
「一緒に考えようか」
と言って、ホワイトボードに図を書き始めました。
ところが、ふと見ると、生徒はノートを開いたまま、何も書いていません。
問題文と、ずっとにらめっこしています。
そこで私は、
「おいおい、先生でも図を書いて考えてるのに、君は文章とにらめっこか?」
と、よく言っていました(笑)。
子どもは少し笑います。
でも、手は動きません。
図を書きたくないのではありません。
何を、どこから書けばいいのか分からないのです。
私は、
「誰が出てくる?」
「この数字は、誰の数字?」
と聞きながら、一緒に図を作っていきました。
ここに、計算はできるのに文章題で止まる子の、困りごとが表れていると思います。
「図を書けばいい」で書けるなら、苦労しません
文章題が苦手な子に、
「図を書いて考えたら?」
と言うことがあります。
確かに、その通りです。
でも、どんな図を書けばいいのか分からないから、子どもは止まっているのです。
誰や何が出てくるのか。
数字をどこへ置くのか。
何と何を比べているのか。
何が増えて、何が減ったのか。
それがまだ整理できていない子に、
「図を書きなさい」
と言っても、鉛筆はなかなか動きません。
図を書こうとしないのではなく、
図を書く前の段階で困っているのかもしれません。
計算問題と文章題では、している仕事が違います
計算問題では、何を計算するのかが最初から式になっています。
あとは、足す、引く、掛ける、割る。
ところが文章題では、その式を自分で作らなければなりません。
文章を読む。
何が起きているのかをつかむ。
数字の関係を整理する。
必要なら図にする。
そして、ようやく式を作る。
計算は、そのあとです。
ですから、計算問題はできるのに文章題で手が止まっても、不思議ではありません。
計算力がないのではなく、
文章から式へ向かう途中の道が、まだできていない。
私は、まずその可能性を考えます。
親が図の書き方まで教える必要はありません
先ほどの授業では、私が子どもに質問しながら一緒に図を作りました。
でも、これは授業です。
講師である私の仕事です。
この記事を読んで、
「親が毎晩、つきっきりで図を教えないといけないの?」
と思わなくて大丈夫です。
親ができるのは、子どもがどこで止まっているかを見るところまでです。
一度だけ、こう聞いてみてください。
「これ、誰が出てくる話?」
「この数字は、誰の数字?」
ここで答えられないなら、文章の内容を整理するところで止まっている可能性があります。
誰や数字は分かっているのに図にできないなら、文章から図へ移すところで止まっているのかもしれません。
ここまで分かれば、親が続きを教えなくてもいいのです。
「文章題が苦手」では、まだ大きすぎます
塾や先生へ相談するときに、
「うちの子は文章題が苦手です」
だけでは、困っている場所がよく分かりません。
それよりも、
「問題文に出てくる数字は分かっていますが、自分で図を書き始められません」
「先生の図を見れば分かりますが、一人になると白紙のまま止まります」
と伝える。
これなら、先生も何を練習すればよいのか分かります。
文章題をもう一問解かせるのか。
問題文の内容を説明する練習をするのか。
数字を図へ置く練習をするのか。
止まっている場所が分かれば、次の練習も変わります。
「算数が苦手」と決める前に、ノートを見てください
子どもが文章題で止まっていたら、正解と不正解だけでなく、途中のノートを見てみてください。
計算はできている。
でも、文章題になると何も書かれていない。
それなら、計算の練習を増やす前に、
この子は、文章から図へ移すところで止まっているのでは?
と考えてみる。
親が答えまで教える必要はありません。
子どもが止まっている場所を見つけて、先生へ具体的に伝える。
それだけでも、
「算数が苦手だから、もっと問題を解かせよう」
とは違う学習が始められます。
算数文章題を、図で考える習慣へ
図は、一度書き方を教わっただけでは、なかなか習慣になりません。
次の問題になると、また文章とにらめっこしてしまう。
だから必要なのは、難しい問題をたくさん解くことよりも、
問題文のどこを見るのか。
どの数字を使うのか。
それを、どんな図にすればいいのか。
この途中を繰り返し練習することです。
家庭でその練習ができるように作ったのが、文章題ドリルです。
答えを早く出すためではなく、文章を図に移して考える習慣をつけるための教材です。
一人で取り組んでも図を書く習慣がつきにくい場合や、どこで止まっているのかを直接見てほしい場合は、オンライン個別レッスンも行っています。
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この記事を書いた人|ミスター・ツカム
中学受験指導歴20年以上。個別指導塾で、延べ3,000人以上の子どものノートを見てきました。子どもの「やる気」や根性だけに頼らない学習の仕組みを考えています。
