中学受験生を持つご家庭の、最も多くの悩みが「子どものやる気」だと断言しても過言ではないと思います。
中学受験を決めた当初は、親も子も希望に満ちて何事にも前向きにとらえていたのに、
月日が流れるにつれて、やる気はみるみる無くなり、
「あれほど頑張るって言ってたのに」
「アンタの言うことなんも信用できないわ!」
と、あきれるやら情けないやら、それがいつの間にか怒りに変わってしまって、親子バトルが始まったりしてしまいます。
しかし、ちょっと待ってください。
お子さんの行動を非難する前に、「やる気」について考えてみましょう。
私の経験から3つのポイントに絞って「やる気」を考えます。
お子さんの「やる気を出す方法」のヒントがあるかもしれません。
中学受験 やる気がないのは性格?
私がよくうける相談に「うちの子はやる気にムラがありすぎて困っています」というものがあります。
学期の始まりや塾のクラス替えの後とかは、めちゃめちゃテンション上がって頑張るのですが、それが1週間も続きません。
どうでしょう?あなたのお子さんもこんな傾向ありませんか?
え?ありますって?
安心してください。それが正常な人間なのです。
あまりやる気が出ていないお子さんに、
「もっと、やる気を出しなさい。頑張りなさい」といくら声を掛けても逆効果です。
私も子どもの頃に、そんなこと言われようものなら、
ますますやる気は失せていった覚えがあります。
まず、ひとつめのポイントとして心理学からのアプローチをしてみます。
心理学には、「期待×価値理論」というものがあります。
こんな式で表わされます。
●やる気=期待×価値
「期待」とは、成功する見込みがあると思えばやるし成功する見込みがないと思えばやらないということです。
どういうことかと言いますと。
あなたは宝くじを買いますか?
時々買うという方は、「もしかしたら当たるかも?」という見込みがあるからですよね。
このような『主観的な成功可能性に関する信念』を期待と呼びます。
例えば、次の模試は偏差値を10上げると塾の先生と約束したとします。
この目標はなんとか頑張れば達成できそうだと信じれれば、やる気は保てます。
どう頑張っても達成できそうにないと思えば、やる気は持てないはずです。
もう一つの「価値」とは、
「取り組むのに値する行為だからやる」という要素です。
志望校に合格することで、家族や友人からスゴイ!と思われる。
知り合いの先輩と同じ学校で勉強ができる。
お子さんによっていろいろな価値があることでしょう。
この理論で大事なのは「期待 + 価値」ではなく、
「期待×価値」だということです。
つまり、どちらかが「0」に近ければ、
やる気ははてしなく「0」に近くなるということです。
映画の世界でもこの法則に則ってヒットし、アカデミー賞を獲得したものもありましたね。
映画「ロッキー」で、
名も無いボクサーのロッキーが世界チャンピオンに挑戦する前夜、
恋人のエイドリアンにこう打ち明けます。
「15ラウンド終わって、まだ俺が立っていられたら、
俺はただのゴロツキじゃないことが証明される」
チャンピオンに勝てる「期待」は限りなく「0」に近いのに、
「価値」を無限大に感じたロッキーのやる気の凄さを感じます。
ミスター・ツカムの大好きな映画です。「ロッキー 特別編」
中学受験においては、お子さんはなかなか「価値」の重要さには気がつきにくいと思います。
だから、ご両親は「できそうだな」という気持を持てるように、お子さんを導いてあげてください。
●お子さんのやる気 = 「できそうだな」×「中学受験の価値」
このような式になりますね。
お子さんの、やる気が下がったかな?
・・・と感じたら、上の式を思い出して、何か対処してあげましょう。
例えば家族でゲーム感覚で「志望校に合格する価値」を書き出してみましょう。
初めは、あまり書けなくてもかまいません。なんでもOKですよ。
「合格すると自慢できる」
「おばあちゃんとの約束が果たせる」
「お祝いにゲームソフトを買ってもらえる」
「あこがれの科学者と同じ学校に行ける」
…この辺りで、お子さんは書くのが止まってしましそうですね。
でもまだまだ、無理やり作ってでも書くのです。
「大好きな中央線に乗って通える」とか、
「嵐の松潤の家の近くに学校があるから(笑)」
こんなことでもOKなんです。
理由づけをすると脳はそれはとても重要なことであると認識しますので。
このワークは本当に効果があるのでやってみてくださいね。
中学受験でのやる気のスイッチはどこにある?
やる気のスイッチみたいなものがあって、
それを押せば瞬時にやる気が出て集中力を得られればいいですよね。
実は、脳の中にあるのを知っていますか?
惻坐核(そくざかく)という部分なのだそうです。脳の真ん中あたりに左右にひとつずつあります。
ここ刺激するとやる気がどんどんと出てきます。
では、どうしたら刺激できるのでしょうか?
頭を叩く?(笑)
好きな飲み物を飲む?
好きな音楽を聴く?
違うのですねぇ。
惻坐核を刺激する方法は、
●小さな行動を起こす。…のです。
つまり、
「あーやる気が出ないなぁ。どうして今日はあまりやる気が出ないのかなぁ」
…と嘆き、悩んでいても絶対にやる気は出ないのです。
それより、
まったくやる気がない状態でいいですから、
簡単な暗記の復習をするとか、
計算問題を始めるのです。
最初から、よーし今日は難問にチャレンジするぞ!…と意気込むことよりも、
リビングでだらだらしながら、暗記をひとつふたつでも始める方がやる気のスイッチは入るのです。
この方法は、心理学でいう森田療法(もりたりょうほう)です。
お子さんの学習だけではなく、
ご両親のやる気にももちろん当てはまる方法ですよ。
そうは言っても、その「はじめの一歩」をなかなか始めようとしなくて困ってます。
…という声が聞こえてきそうですね。
そこを何とかアイデアを出していろいろ試してみてください。
やる気を入試まで続かせるために
これまで2つのポイントをお伝えしてきました。
「やる気」というものはそう簡単にできるものではないことはご理解いただけたでしょうか?
最後の3つ目のアドバイスは、これも心理学で証明されているのですが、【自己暗示】にトライしてみましょう。
自分に暗示をかけると、いろいろ克服できることがありますよ、とあなたも本やブログ記事などで読んだことがあると思います。
でも、正直なところ、自己暗示は効果があるのでしょうか?
社会心理学者のエイミー・カディが、興味ぶかい実験をしています。
『自信は作り出せるか?』という実験です。
(写真Wikipediaより)
自信があるように見せかけたポーズをしたとき、
心理学的や生理学的にどのような効果があるのか?
これを調べる実験をしています。
被験者に、
強いポーズと弱いポーズのどちらもとってもらいます。
すると自信がないにもかかわらず、
強いポーズをとってもらうと、
喜んでリスク(危機)に向かえることがわかりました。
生理的な変化は、
リスクをとる行動を促すホルモン、
テストステロンの値が上昇。
ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルが激減しました。
つまり、嘘でもいいので、
ガッツポーズをしたり胸を張ったりすると、ストレスを感じず、やる気が出てくるということです。
胸を張ったらなんかやる気が出てきた。
なんとなくそんな気がする。・・・ではないのです。
生理的なデータも出ているんですよ。
学習の前に毎回毎回ガッツポーズするのも誰かが見ているとできませんから、
意識して姿勢を正しくするだけで良いですね。
感情(emotin)は、行動(motion)によって支配されています。
姿勢を正すだけで気分もよくなります。
姿勢を正したついでに、言葉も付け加えてください。
「今日も調子がいいなぁ」「今日もアタマが冴えているなぁ」
これはアファメーションといって効果が認められていますよ。
(このことについては別の記事でお伝えします)
まだ試してない人は、ぜひやってみてください。
ミスター・ツカムは毎朝、
鏡の前で「絶好調!」と張り切って言ってますよ。